夏樹良写真展
2021年4月30日~
弘前(桜追う旅)
- そして岩木山には林檎の花が良く似合う -
芭蕉の筆に『三里に灸すゆるより・・・』というのがあるが、それに似た感覚で、その年、桜を追ったほうがいいんじゃないかという気持ちに駆られた。謂うならば、季節を遡って、おそらく本州で咲いている最後の桜に会いたくなったということである。桜が自分を待っているというような、その桜を撮らなければならないという気持ちにとらわれたのである。自宅で咲く吉野桜を見たあと、会津の桜、そして弘前の桜というように、私は桜に憑かれていた。
その日はまず、東日本大震災復興祈念の若冲を観る。そこまで約690km、連休ということと事故渋滞があって、時間にして5時間かかった。福島の県立美術館からさらに、約460km、時間にしてまた5時間。夜8時過ぎくらいに弘前に着いた。弘前公園の桜、桜と弘前城を撮るというのが、この旅の目的だ。車を近くのデパートの駐車場に入れ、ホテルに荷物を置きすぐに徒歩で出かけた。30分ほどで弘前公園に着く。夜の空気がひんやりとしていた。堀の桜はみんな散ってしまっていて、あぁ遅かったなと意気消沈した。しかし、このままのはずはないと気を取り直して、公園内に入る。
公園はライトアップされていて、
ほんの少し観光の客が歩いていた。
しだれ桜が今咲いているのだ。
そして、遅咲きの桜もその花を残していた。
「わたしに会いにきたのね。」「ここよ。」「こっちよ。こっち。」
「ほら。わたしが見える?」
というように囁きかけている。
それで、
時を忘れて夢中になってシャッターをきった。
気が付くと閉園の時刻になっていた。
午後11時。
じゃあ、俺は帰るよ。ありがとう。
と弘前公園の夜桜に別れを告げると、
一瞬、風が吹いて、桜は花びらを散らした。
翌日、弘前駅まで歩き、
そのあたりで、朝食を摂った。
その後、街を暫く歩いて街に咲く桜を見た。
弘前市街を少し歩いた後で、
弘前公園の桜にまた会いに行った。
公園の桜は、何故か昨夜と違って、
美術館に展示されている美人画のように、
澄ましきっていて、
ひとことも
私に声をかけるようなことはなかった。
昨晩の桜の声や囁きは、
時を超え再び桜に巡り逢えた
私の心の高揚感が
引き起こした幻想であったのかもしれない。
そして私は、
弘前城の桜に別れを告げた。
弘前の桜に別れを告げた私は、
岩木山に向かった。
地元の人々からは、その山岳信仰を伴い
「お岩木」「お岩木様」と親しまれている山である。
その姿は津軽富士とも呼ばれ、
実に美しい。
すると、いつしか山の桜が
早咲きの林檎の花に
いつに間にかとってかわっていた。
やがて、この土地に林檎の花が咲き乱れるその景色を想起しながら、
岩木山をバックミラーで振り返り、
振り返りつつ、
リンゴロードを走り、
「それでは、これにて失礼つかまつります。」
と岩木山にも別れを告げた。
そこで、ひとこと。
「岩木山には林檎の花が良く似合う。」
日本列島は、桜の季節が終わり、新緑の季節を経て
雨の季節が訪れようとしていた。
All Photos
by
Ryo Natsuki




























































































































sakuraと岩木山とリンゴの花。良い旅のショット!ありがとうございます。
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